コンプライアンスとは?違反事例や具体的な意味をわかりやすく解説

コンプライアンスとは「法令遵守」を意味します。しかし、単に「法令を遵守する」という意味ではありません。企業には、法令を遵守するだけでなく、倫理や公序良俗といった社会規範に則り、公正・公平な事業活動を行うことが求められています。

企業に適用されるコンプライアンスの範囲は明確に定義されているわけではありませんが、留意すべき重要な要素が3つあります。

1.法令

法令とは、国会が制定する法律、国の行政機関が制定する政令、府令、省令など、国民が遵守すべき事項の総称。また、地方自治体の条例や規則を含む場合もあります

2.就業規則

就業規則とは、従業員が仕事をし、職務を遂行するために遵守しなければならない社内規則、マニュアル、作業手順、その他の取り決めを指します。常時10人以上の従業員を使用する使用者は、労働基準法により、就業規則を作成し、所轄労働基準監督署長に届け出ることが義務付けられています。

また、就業規則を変更した場合も同様に所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。

3.企業倫理と社会規範

企業倫理と社会規範とは、社会が企業に期待する倫理基準や公序良俗のことです。いずれも法律で義務付けられているものではありませんが、消費者や取引先からの信頼を得るためには不可欠なものになります。
情報漏えい、データ改ざん、ハラスメント、男女共同参画などに関する法規制の有無にかかわらず、企業は社会倫理に則った意思決定や事業活動を行うことが求められています。
社会が求める企業像は、社会情勢だけでなく、社会意識の変化や時代の変遷によっても変化するため、定期的な見直しと改善が必要になります。

内部統制との違い

内部統制とは、企業の適正かつ健全な運営を確保するための企業内のルールや仕組みのことです。内部統制を構築する目的は4つある。内部統制を構築する目的の一つにコンプライアンスが位置づけられています。したがって、内部統制の整備もコンプライアンスを確保するための重要な要素であるといえます。

上場企業や取締役会設置会社などの大企業では、内部統制の整備は法的な義務です。しかし、それ以外の企業においても、内部統制の整備は、業務の効率性やコンプライアンスを確保するために重要になっています。

コーポレート・ガバナンスとの違い

コーポレート・ガバナンスは内部統制と混同されがちです。コーポレート・ガバナンスは、企業の健全な運営を確保するためのシステムであるという点では、内部統制と変わりません。また、コーポレート・ガバナンスはコンプライアンスを確保するための重要な要素でもあります。

コーポレート・ガバナンスと内部統制の大きな違いは、制度によって監視・管理される対象にあります。コーポレート・ガバナンスは株主や取締役会が会社の経営を監視する仕組みであり、内部統制は経営者が会社の従業員を統制する仕組みということです。

コンプライアンス違反はなぜ起こるのか?

ブラック企業問題、過重労働、ハラスメント、情報漏洩など、コンプライアンス違反による企業不祥事が後を絶ちません。なぜこのようなことが起こるのか、その理由を考えてみましょう。

知識不足による知らず知らずのコンプライアンス違反

経営陣、法務、総務、人事などがコンプライアンスに関する知識不足から法令を軽視してしまうことがあります。労働基準法、育児・介護休業法、高年齢者雇用安定法、男女雇用機会均等法、最低賃金法などの法令を知らずに違反してしまうのです。社会が求める倫理観を理解していないとも言えます。

こうした知識不足によるコンプライアンス違反は、よくあるケースのひとつです。まず企業のトップがコンプライアンスを正しく認識し、守るべき規範を示さない限り、社員のコンプライアンス意識は高まりません。

過度なノルマ設定が社員を追い詰める

法律違反と分かっていながら不祥事を起こしてしまうケースは少なくありません。過度なノルマ設定や上司からのプレッシャーが、従業員を法律違反や就業規則違反に走らせるのです。昇進や昇給、インセンティブを得るために、不当な手段で成果を上げようとするわけです。このようなコンプライアンス違反を防ぐためには、目標設定の見直し、管理職の再教育、評価制度の再構築などが急務となります。

防止するための社内メカニズムの欠如

コンプライアンスを管理する仕組みがないということもあり得ます。このような場合、体制が脆弱で情報漏洩が起こりやすいなど、会社の組織体制や環境に問題があるケースが多いです。また、社内で悪いことをしている人がいても、誰に報告すればいいのかわからない場合もあり、誰もが簡単に機密情報にアクセスできるような場合もあります。このような環境では、コンプライアンス違反を防ぐことは不可能に等しくなります。社内に相談窓口を設け、情報セキュリティ対策を講じるなどの対策が必要です。

コンプライアンス違反の事例

コンプライアンス違反の事例は枚挙にいとまがありませんが、大きく分けると「労務問題」「法令違反」「不正会計」「情報漏洩」の4つに分類されます。代表的な事例をもとにコンプライアンスの重要性を理解し、ガバナンス(管理体制)を強化していきましょう。

労働問題

過労死ラインを超える過重労働や、パワハラ、セクハラなどの各種ハラスメントなど、労働者が使用者から受ける不当な扱いや不利益による精神的・肉体的苦痛を指すます。
労働問題におけるコンプライアンス違反は、労働時間に限らず複数の要因によって引き起こされることが多いため、表面的な問題を解決するのではなく、根本的な問題を解決することが重要になります。

法令違反

食品衛生法や著作権法など、企業が事業を行う上で遵守しなければならない法令違反を指します。法令違反は基準が明確に定められている場合があり、コンプライアンス違反の中でも特に社会的な反発が強いものです。
法令違反は、最初は小さくても次第に数が増え、取り返しのつかない重大な違反に発展することもあります。このような重大な違反を見落とさないよう、不断の警戒が必要になります。

不正経理

不正経理は、取引先、関係会社、関係者など、幅広い人々に損害を与えます。不正会計が発覚した後の企業のダメージは大きく、最終的に経営破綻に至るケースも少なくありません。
不正会計が企業に与えるダメージは甚大です。架空請求、業務上横領、粉飾決算など、不正会計に該当する違反行為に対しては、常に厳しい態度で臨む必要があります。

情報漏洩

情報漏洩とは、企業が管理している顧客情報やインサイダー取引などの漏洩を指します。情報漏えいは、従業員が情報の秘匿性の高さを認識せずに情報を取り扱うことで発生しやすく、発覚後に取引先や顧客とのトラブルに発展することもあります。
情報漏えいは、金銭的なダメージだけでなく、社会的な信用を失い、企業の存続さえも脅かしかねません。情報の取り扱いや管理には細心の注意が欠かせません。近年、情報漏洩に関する厳格なルールを定め、セキュリティ対策に注力する企業が増えており、情報漏洩件数は減少傾向にはあります。

コンプライアンス徹底への取り組み

企業がコンプライアンスを強化するためには、まず正しい知識の習得と全従業員の意識改革が重要になります。ここでは、コンプライアンス違反を未然に防ぐための取り組みや留意点を紹介していきます。

コンプライアンス規程・マニュアルの作成

違反を未然に防ぐために、社内規程やマニュアルを作成しましょう。データの社外持ち出しや目的外使用の禁止、各種ハラスメントの防止、不要な時間外労働の禁止、SNSや人前での発言に関する注意事項など、守るべきコンプライアンス事項は多岐にわたります。
コンプライアンス・プログラムを作成し、基本原則、従業員教育、罰則などのガイドラインを策定することも必要です。ただし、社内で共有する前に必ず専門家に監修してもらうことが重要です。特に法令違反に関する取り組みについては、当該法令が正しく解釈されているかを弁護士に判断してもらう必要があります。

コンプライアンス教育

コンプライアンスに精通した外部講師による定期的なコンプライアンス研修やセミナーなどの教育活動も重要です。
研修やセミナーの目的は、ハラスメントや情報セキュリティ問題など、法令違反ではなく、従業員の倫理観やモラルの欠如に起因するコンプライアンス違反を未然に防ぐことにあります。
マニュアルや規則だけでは不十分であり、特に従業員自らが違反の原因を排除することを考えなければならない問題については、セミナーや勉強会を開催する必要があります。コンプライアンス専門家によるセミナーや勉強会を開催し、従業員一人ひとりが考える習慣をつけることが大切です。

相談窓口の設置

コンプライアンス違反は、経営者や上司に相談することで発覚するケースが多いのが現状です。そこで、社内に相談窓口を設置し、コンプライアンス違反を未然に防止することが有効になります。
相談窓口の設置にあたっては、従業員が相談しやすい環境を整えることが重要です。
相談窓口は公益通報者保護法による保護の対象となります。相談窓口の運営にあたっては、公益通報者保護法に違反しないように注意する必要があります。

まとめ

コンプライアンスは、企業活動において必要不可欠なものです。コンプライアンス違反は、取引先や顧客からの信頼を大きく失い、その後の事業運営に大きな悪影響を及ぼしかねません。コンプライアンスの正しい意味と社会から求められる企業像を理解し、コンプライアンス違反によるトラブルを未然に防ぎましょう。

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